ODIOUS FIGURE

PBWシルバーレインより、工藤一弥(b02096)の…色々。

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たたかうこと。

居合道部に出入りするようになって。

生まれて初めて、生きた人間と闘り合った時のこと。
生まれて初めて、剣を振るのが楽しかった時のこと。

そして―――。



生まれて初めて…友達ってやつができた時のこと。





頭に走る鋭い痛み。
当たり前だ。お互い目一杯踏み込んで頭突き合ったんだから。
目を開けば、見慣れた道場の天井。
おっと。今度は耳、背中、鳩尾…いや、体中が軋む。
当たり前だ。がら空きのボディにきつい一撃をもらったんだから。

…一撃をもらって、それから?
……………そうか。俺は、負けたんだ。

痛みに耐えて身体を起こすと、俺と稽古をしてた相手、七瀬北斗が横たわってる。
どうやら、俺に正拳突きをくれた後、北斗も倒れたらしい。

稽古?違う。俺達は…少なくとも俺はずっと本気で戦ってた。
稽古ってやつがどんなものなのか知らないわけじゃない。
ただ、今までゴーストと生きるか死ぬかの戦いしかしたことのない俺には、手加減だとか
気遣いみたいな器用な芸当ができなかっただけだ。…最も、ゴーストは元々死んでるが。
とにかく俺はいつも通り、殺すつもりで剣を振り回した。

―――七瀬は?七瀬は本気だったんだろうか。

ふと疑問に思い、そのことを考えかけた矢先に、立ち会ってた部員達の話声が聞こえた。

怪我人の治療?…そりゃそうか。二人とも、こんなにボロボロだもんな。
高遠をはじめ片崎と月村も救急箱片手にこっちに来る。
その後、目覚めた北斗がほふく前進で逃げようとしたり、やっぱり観念したりしながら、
その場は和やかに終わった。
あんなに激しい死闘を演じた後だってのに、本当に和やかだった。

当の俺はと言えば、虚しさに似た、けれど昂揚感にも近い、どこか矛盾した奇妙な感覚に
とらわれながら、みんなの笑い声の響く道場で一人、自分を持て余していた。



立会い稽古の判定は、俺の優勢勝ちだったらしい。
でも、もしも、あれが真剣勝負だったら間違いなく俺が死んでただろう。



日も暮れて、ひとり、またひとりと帰路につき始めた頃、伸びをしながら道場を後にする
北斗を呼び止めた。さっきの疑問がどうしても頭から消えなかったから。
「おっ」と、俺に気づくと、屈託のない笑顔で開口一言。

「立会いの相手さんきゅな!すっげ楽しかった♪」
「なっ…」

咄嗟に返す言葉が見つからない。
礼もそうだが…まさか楽しかったなんて言われるとは夢にも思わなかった。
何も言えないまま、しかしこのまま引き下がるわけにもいかず、とりあえず後を追う。
北斗は着いて来る俺を不審に思う様子もなく、黙って同じ速さで歩いてた。

「…なあ、七瀬」
「ん?」
「人と戦うってのは…なんなんだ?楽しいものなのか?」

北斗は俺の問いかけに振り向かず、ただ立ち止まる。

「勝つってどういうことだろう。負けは?」

我ながら珍しく、続け様に言葉を浴びせ掛けた。
ひょっとしたら、居合道部でこんなことを考えてるのは俺だけかも知れない。
もしかすると、相当バカなことを口走ってるのかも知れない。
それでも、知りたかった。

「俺にとって、戦うってのは俺が死ぬかゴーストが消えるかふたつにひとつだけだった。
…楽しくやれるようなものじゃなかったんだ」

一拍だけ置いて、七瀬は「よっ」と一足飛びで塀の上に登り、両手を広げてバランスを
とりながら「俺は馬鹿だから参考になるかわかんねえけど」と笑いながら歩き出した。

「戦うってのは負けねえって事。勝敗じゃなく、自分を貫くことだと思ってる」


時々はきっついこともあるけどさ。それでも譲れねえもん握り締めて、笑ってやる。
それが俺の『戦う』って事かね。
俺はおめぇの悩みは知んないけど、要は簡単な話なんだよ。
世の中には苦しい戦いも楽しい戦いもあるってだけ。
敵でも正々堂々とした武人なら、俺は楽しいって感じるし。
倒れたら泣く奴が居る相手を倒す時は、やっぱりきつい。そんだけだと思うぜ?


「答えになってんのかこれ」

後頭部をかきむしって照れくさそうにまた笑い、その拍子でよろめきながらもなんとか
持ち直す七瀬。

「桐生部長も言ってるだろ。活かすも殺すも自分次第って。殺す技でも誰かを助ける
ことができる。殺す為だけの技なんて存在しねえんだよ。要は振るう奴の心次第って事」
「………」
「ま、俺達はまだガキなんだし、全部わかったらおかしいかもだけどな」

言われた内容を頭の中で何度も繰り返しながら、その意味を考え込む俺に、北斗は肩を
竦めてみせた。やがて、とんっとアスファルトまで飛び降りると、くるりとこっちに
向き直る。

「心で感じたもん積み重ねて、自分の答えだしなって」

そして、今までとは違う力強い笑みを浮かべて、また振り返って後頭部を抱えるように
後ろ手を組んで「言いたいことは以上」っと早口に続けた。

「んじゃな。俺こっちだから」
「あ、ああ」

いつの間にか、十字路に辿り着いていた。
七瀬はちらりと顔をこちらに向けて右手を上げると、開けっ広げな笑みと、闘ってる
最中からは想像もつかないような隙だらけの鷹揚な背中を見せて、帰路に着いた。
俺は後ろ姿を眺めたまま、七瀬が語った言葉を何度も頭の中で繰り返していた。



―――殺す技でも誰かを助けることができる。要は振るう者の心次第。

わからないわけじゃ、ないんだ。
銀誓館に集った能力者が戦うことは、それだけで誰かを助けることに繋がる。
信条や主義主張、哲学。言い方は色々だが、誰がどんな思いでゴーストを退治しても、
その事実に違いは無い。
ただ、そのことにまるで実感が湧かない。何故だ?何故?俺は…何故戦うんだ?
そういえば戦う理由とか、今まで考えたことも無かった。
ガキの頃、俺が剣を振り回すきっかけになった出来事。

あの時、俺は誰にも関わらないと決めた。一人で強くなって、ゴーストを狩り続けると。
誰も巻き込みたくないし、誰にも死んで欲しくないから。
それが…俺の戦う理由?貫き通す意思?
でも、結局、今になって誰かに関わろうとしてる。
銀誓館学園に入学して、居合道部の門をくぐって。



未だ熱い左掌を見つめ、ぎゅっと握り締める。さっきの勝負を思い出してみる。

…そうだな。楽しかった、よな。

頭の中を真っ白にして、お互いの全部をぶつけ合う。
相手が強ければ強いほど、それはどんなに充実した時間になるだろう。

自分のことすらままならない今の俺じゃ、その意味とか、いまいちわからないけど。
また、あんな勝負がしてみたいと思った。次は負けないと心に決めた。



とりあえず、今はそれでいいと思った―――。
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この記事に対するコメント


本当は立会い稽古の直後、できれば一月中に載せるつもりだったんだが
後ろの方に居るしょぼくれた奴が情けないお陰で、
今まで仕上がらなかった。

なにはともあれ、協力してくれた北斗に感謝だな。

ちなみに話的には、月村のところにある(バレンタインの)偽シナに続く。
【2007/05/14 02:30】 URL | 一弥 #g7.AOuZg [ 編集]


北斗先輩爽やかですね~。
二人のやりとりが微笑ましいというか
友情って感じがひしひしと伝わってきて羨まs
・・・こほん。
なんか好対照で良いコンビですね!
【2007/05/19 20:29】 URL | 理代 #2M4XNDaw [ 編集]


随分コメント返しが遅くなった…。

この当時、北斗はまだ友好人だったが、
俺はこのことがきっかけで見学者から
部員になることを決めた…気がする。

…そうだな。正反対かも知れない。
【2007/06/11 11:17】 URL | 一弥 #g7.AOuZg [ 編集]


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プロフィール

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Author:工藤一弥
ID:(b02096)

性別:男
職業:高校生(魔剣士)

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